家庭学習を拒否？小学生の「勉強したくない」を乗り越える方法

「うちの子、なかなか机に向かわない」

「宿題をやるまでにバトルになる」

「毎日喧嘩ばかりで、疲れる…」

小学生の家庭学習について、こうして悩んでしまうこと、ありますよね。

自分から進んで机に向かってくれるのが理想的ですが、なかなかそうはいかないのが小学生。

だからといって放置すると、学習習慣も学力も身に付きません。

 

この記事では、低学年を多く担任した元教員が、小学生が勉強をしたがらないときの理由や、親も子も負担になりすぎない解決策について解説します。

なぜ家庭学習は必要？

「勉強にはついていけてるようだけど、家庭学習ってやらせた方がいいの？」

「毎日宿題が出るけど、意味があるの？」

低学年の保護者の方から、よくこのような相談を受けました。

たしかに低学年のうちは、学習内容が比較的やさしいので「勉強しないとついていけない」ことは少ないです。

でも、家庭学習の意義は、学力を高めるだけではないのです。

ここでは、家庭学習がもたらす具体的な効果をお伝えします。

低学年だからこそ家庭学習が必要な理由

机に向かう習慣が付く

低学年のうちは、これが一番大きな意義だと言えます。

3・4年生、5・6年生になると学習内容がぐっと難しくなっていきます。

中学生くらいになると、「テスト勉強」が当たり前の世界になりますよね。

 

でも、勉強が難しくなってから勉強させようと思っても、そうはいきません。

机に向かう習慣がないからです。

1日5分でも10分でも「机に向かって勉強（作業でもOK）する」という行為が、家で学習する習慣への第一歩なのです。

基礎的な学力を身に付けて、自信アップ

学校は、基礎的な内容を宿題を出すことが多いです。

特に低学年の学習内容は、3年生以上の学習の基礎となることばかりだからです。

基礎が身に付いていないと、その後の学習でつまずいてしまう恐れがあります。

学校で過ごす多くの時間が、学習する時間。

「わからない」状態では、楽しくない時間が大半を占めると言ってもいいでしょう。

一見簡単そうに見える内容でも、自信をもって学習に臨むためには、基礎を固めることが重要です。

「できた」「わかった」という経験の積み重ねが、子ども自身の自己肯定感や挑戦する意欲につながるという効果があります。

計画を立てる経験になる

家庭学習に慣れてくると、内容を自分で決めて取り組めるようになります。

「ドリル1日2ページ」

「17時から20分勉強する」

はじめの頃は難しいので、親が主導で一緒に決めても構いません。

予定通りにいかないこともあるでしょう。

トライ＆エラーを繰り返して、自分に合うペースを見付けられるようになるのです。

できることが増えて、生活が充実する

勉強をすることで、世界が広がるのは、子どもも大人も同じです。

漢字が読めるようになると、本が読めるようになります。

辞書の引き方を覚えたら、自ら調べられるようになります。

勉強する→知識が増える→できることが増える→うれしい→勉強を「楽しいもの」と学習する→勉強する→・・・

このような、いいサイクルができていくでしょう。

「勉強しないといい学校に行けないよ」

「将来困るよ」

子どもが勉強したがらないとき、進学や就職など今後のことが心配になり、つい言ってしまいますよね。

大人は、選択肢を広げるために勉強はしておいた方がいいと思えますが、低学年にとってはあまり実感のもてるものではありません。

低学年のうちは、その将来のために「机に向かう習慣が付いていてよかった」と思えるように関わることが大切です。

家庭学習の時間の目安

一般的には「学年×10分」が家庭学習の目安と言われています。

1年生なら10分、2年生なら20分。

ただし、これはあくまで一つの目安です。

現場で声を聞いていると、学校の宿題が「目安時間」ちょうどになる子もいれば、早く終えて余裕がある子もいて、個人差は大きいもの。

「机に向かった」ことが低学年にとっては大事です。

もし宿題だけで終わってしまっても、気にしないようにしましょう。

子どもが家庭学習を嫌がるのはなぜ？

「うちの子、全然勉強したがらなくて……」
家庭学習の悩みで、もっとも多い声のひとつです。

やる気がないように見えても、その裏には「がんばれない理由」が隠れていることがよくあります。

とくに低学年のうちは、まだ体力も感情のコントロールも未熟な時期。

まずは、子どもが「やりたくない」と感じる背景を知ったうえで、適切な関わり方を考えていきましょう。

子どもが勉強をしたがらない、よくある4つの原因

子どもが家庭学習に後ろ向きになる理由には、さまざまなものがあります。

ここでは、主に挙げられる原因を5つ解説します。

学校生活で疲れていて、体力が残っていない

授業・休み時間・給食・掃除……小学校生活は想像以上にエネルギーを使います。

中には学校からまっすぐ学童に行く子や、習い事をしている子も。

低学年は特に、まだ体力が追い付かない子が多いので、いざ始めようと思っても、なかなか勉強モードになりません。

宿題をしようと思っても集中できず、なかなか進まない、ミスが増えることなどにつながり、親子バトルなんてこともありますよね。

でも、子どもは「なんで学校でも勉強してるのに、家でも勉強しなくちゃならないんだ！」と思っているかもしれません。

遊びたいという気持ちが強い

外遊びやゲーム、おしゃべりなど、楽しいことが目の前にあると、勉強に集中しにくくなるのも自然なことです。

放課後は外に遊びに行きたい、勉強よりゲームがしたい、と学習を後回しにしてしまうケースはよくあります。

「宿題を終わらせてから遊びに行く」というルールを設けている家庭もありますよね。でも「全然言うことを聞かなくて…」と悩む保護者も珍しくありません。

わからない・難しいと感じている

学習に苦手意識があると「できないことに向き合いたくない」気持ちが強くなりがちです。

理解できないわけではなくても「なんだか難しそう」と思うだけで、気分が向かないこともあります。

また、実際に学習に困りを抱えていて、一人では取り組むことが難しい場合もあります。

文字を読むことや読解が苦手な子は、やる気があっても、解き方がわからなくて進まないこともあるのです。

勉強する意味がわからない

「勉強なんて楽しくない」

「なんで勉強なんてしなくちゃいけないの」

こう思っている子も多いです。

「できた！」「わかった！」と感動した経験が少なかったり、実感できていなかったりする場合があります。

これは、学校の授業で大体の内容を理解できる子にもみられる傾向です。

「家でやらなくてもわかるのに、なんでやらなきゃいけないの」の思考になります。

子どもの問題だけじゃない？親のかかわりが影響することも

自分のできない部分を知られたくない！という気持ちがある子は、なかなか家で勉強したがりません。

勉強している姿やプリントを見られると「できないところ」が伝わってしまいますよね。

子どもは親に「かっこいいところを見せたい」と思うものです。

「わからない」と言うのが苦手な子やできないところを見られたくない子は、家では手をつけたがらない傾向があります。

また、×がつくことに強い不満をもつ子もいます。せっかく頑張ったのに「間違っている」と真正面から訂正されると悲しくなるのは理解できますね。

×をつけるのではなく、新しく枠を作って「もう一度書いてごらん」と声かけを変えるだけで、すんなり取り組めることもあるのです。

安心の場である家、かっこいいところを見てほしい親、という環境が、逆にやりたくない気持ちを生むこともあるのです。

家庭学習を続けるための声かけ・環境・アイテムの整え方

低学年が家庭学習の習慣を身に付けるためには、親のサポートが必要です。

でも、それは「無理やり毎日やらせること」ではありません。

無理な日も、もちろんあってOKです。

家庭学習の目的は、「学びの習慣をつけること」。

そのために、声のかけ方や環境づくりを工夫していくことが大切です。

まずは「なぜ勉強するのか」を一緒に考えよう

子どもが家庭学習を続けられるかどうかは「納得感」があるかどうかで変わります。

「わからなかったことがわかると楽しい」「できたら先生に見せたい！」など、勉強することのよさについて、言葉にしてみましょう。

「みんなやってるんだから」「宿題はやるのが当たり前」といった声かけは、やる気を引き出す声掛けではありません。

大人も「やらされてる感」が強いとやる気が出ませんよね。子どもも同じです。

学びやすい環境を整えよう

家庭学習のしやすさは、環境で大きく変わります。

リビングや子ども部屋、音の有無などはその子によって合うスタイルは違うもの。

ここでは、これまで実際に効果があったと報告を受けた方法を紹介します。

静かな空間をつくる
テレビや兄弟の声など、気が散るものはできるだけカット。

視界に入るものも子どもにとっては刺激になるので、物を片づけて、気が散るものを見えなくなる　　ようにしましょう。「目にも耳にも刺激がないように」がポイントです。

親も一緒に「学ぶ」姿勢を見せる
たとえば隣で読書したり、ノートをつけたりしてみてください。

お手本にもなりますし「おうちの人も頑張ってる」と思うと、子どもも集中モードになります。

すぐ調べられる環境を用意する
「わからない」と思ったときに、すぐ解決できるように子ども用の辞書や、アプリなどの環境を整えてあげましょう。

自分で調べられるようになるまでは時間がかかるかもしれませんが、それが身に付くと一人での学習の進み方が変わります。

「わからないことは調べる」習慣が付くこともメリットです。

タイマーの活用
終わりが見えないこと、かつ、それが苦手なことだと苦痛を感じますよね。

そんなときに、タイマーをセットしておくと「10分だけがんばろう」「音が鳴ったら終わり」など、気持ちの切り替えにつながります。

数字がカウントダウンされるデジタルタイマー、視覚的に時間の減りを実感するタイムタイマーや砂時計などを活用してみてください。

夕方に集中できない子は“朝活”もアリ！

「学校帰りはくたくた…」

「放課後は遊びたくて集中できない！」

そんな子には、朝の時間に5〜10分だけ勉強するのも効果的です。

朝はまだ頭がスッキリしていて、気が散りにくい子も多いです。

生活リズムにもよりますが、「朝頑張れば、放課後は自由」と子ども自身がメリットを感じるようになると、そのまま習慣付くケースがあります。

「やり方がわからない」タイプの子への関わり方

やる気はあっても、どう取り組んだらいいかわからない子もいます。

問題を作ってあげる
「算数を勉強したいけど、どうやったらいいの？」という子にはノートに問題を作ってあげるのもいいです。

そのときに問題の作り方を教えると、簡単なものは自分で作れるようになります。

内容を選ばせる
　やり方がわからないからといって、毎日親が内容を決めていては、いつまでたっても1人で取り組めるようにはなりません。

「今日はこれとこれ、どっちやる？」と選択肢を与えてみましょう。

これは、実は親がサポートしているのですが「自分で決めた」ということがやる気を引き出したり、自信をもたせたりします。

好きなものからスタートさせる
「苦手なことを補わなければ」と思いすぎなくて大丈夫です。

苦手なことばかりだと「勉強＝大変、嫌だ」となるので、「今日は何しようかな」という日こそ自由研究のように「好きな内容」に没頭するのもいい刺激になります。

子どもにとっては何でも学びにつながります。

絵本作りは字や文を書く勉強、ポケモン図鑑でもカタカナや漢字の勉強、というように、一見勉強っぽくなくても、学習につながることは日常にあるものです。

やる気を引き出す声かけのコツ

小さなことでもしっかり褒める

「〇分も集中してたよ。すごいね」

「この字が特にきれいに書けてるね」

など、具体的に褒めることが大切です。

結果だけでなく、学習への姿勢や過程を認める声掛けだと「ちゃんと見てたこと」がより伝わります。

「教えて！」というスタンスで関わる

「できたこと」や「わかったこと」を質問してみてください。

子どもは勉強に関して「教わる」ことの方が多いので「教える」ことは新鮮に感じます。

「自分の学習内容に興味をもってくれてる」と思うと、やる気にもつながります。

また、覚えたことをアウトプットすることで、さらに理解を深めることにつながります。

低学年の場合、うまく説明できなかったり、説明する自信がないがゆえに、めんどくさそうにしたりすることがありますが「～がわかったんだね」と一緒に言語化すると説明力もアップしますよ。

勉強って楽しいかも！低学年でもできる“学びの工夫アイデア”

「楽しくないから、やりたくない」
これは、子どもが勉強を嫌がる理由の中でも、実はとても根本的なものです。

勉強の内容そのものよりも、「勉強＝つまらないもの」と思いこんでいることが、やる気のブレーキになっていることも。
でも、日常生活の中に学ぶ意味があるとわかれば、学習がぐんと身近なものになります。

生活に結びつけると関心がアップする

「これって勉強になるんだ」と感じられる体験は、子どもの「学びのセンサー」を育てます。

家の中にある数字やひらがなを探してみる

時計、カレンダー、冷蔵庫の中のパック、説明書など普段何気なく見ている物の中にも、数字やひらがながたくさん隠れています。

学校でも「5分で教室の中の図形を探してみよう」と進めることがあります。

子どもにとってはゲーム感覚で、でも内容は学習に結び付くので、楽しく学べます。

ごっこ遊びで、お金のやりとりや足し算・引き算を使ってみる

お店屋さんごっこでは「商品名」「個数」「金額」要素があります。

「〇〇（子どもの名前）はいちごを３つ食べれるよ」

「お母さんは４つね。どっちが多い？」

こんな日常の会話も「算数」です。

ただ、「遊んで終わり」じゃなく「これが算数だよ」と教えてあげると「勉強って普段の生活につながるんだな」と実感をもつことができます。

家族の名前を書いてカードを作る

字を覚えたての頃は、家族の名刺カードを作る遊びも、学びです。

「カタカナで書いたらどう書くの？」

「漢字でも書いてみたい」

こんな言葉が生まれたら「学びのスイッチON」です。

身近なもの（家族の名前）から、一般的なもの（漢字の使われた方など）に学びを広げるチャンスになります。

ちょっとした工夫で“遊び×学び”に

遊びの延長で勉強に近づけて「もうちょっとやりたい」を生む作戦です。

親から子へクイズ形式で出題
たとえば「今日の漢字クイズ」「この時計は何時？」など気軽に楽しめる。

子どもの音読の後に親が登場人物を答えるなど「逆バージョン」にしても盛り上がります。

“好きな〇〇”単語帳を作る
好きな動物・食べ物・キャラクターなど、自分だけの単語帳を作るのも楽しめます。

「勉強っぽさ」を感じさせないところがポイントです。

家庭学習ビンゴを作る
子どもと相談して「音読」「ドリルを3問」「10分集中」など９マス程度のビンゴを作成します。

できたらシールを貼ろう！など声をかけて、コンプリートを目指します。

すべて埋めたらどうするかも話し合っておくとモチベーションになりますね。

ごほうびの扱いにはちょっと注意

学校で子どもの声を聞いていると、「100点だったら100円もらえるんだ」「ほしいぬいぐるみ頼んでるんだ」など、ごほうびの存在を耳にします。

ごほうびシステムを全否定するわけではありません。

でも、「ごほうびがもらえるからやる」という外発的動機が強くなると「学びそのものを楽しむ感覚」が育ちにくくなることもあります。

いずれは自分のために勉強するように動機付けしていくことが望ましいので、「やってよかった」を味わえるように関わることが大切です。

「学校では大丈夫？」家庭学習に不安を感じたときのチェックポイントと相談のコツ

家庭での様子を見ていると「うちの子、大丈夫かな？」「もしかして学校でも困ってる？」と心配になります。

ここでは、学校に相談すべきタイミングと、その伝え方をお伝えします。

うちの子まずい？どのくらいで学校に相談すべき？

波はあっても、ある程度宿題ができていて、大きな拒否反応がなければ、心配しすぎなくて大丈夫です。

ただ、次のような傾向があるときは、一度学校と話してみてもいいラインです。

✓何度も教えても次の日には忘れている

✓宿題が難しすぎて、本人が何をすればいいかわかっていない様子

学習そのものに困りを抱えているケースです。

「毎日同じ説明をしているな」

「一度わかったことも、すぐ忘れてしまうな」

この場合は、基礎が身に付いておらず、学校でも困りがある可能性が高いです。

✓10分も座っていられない（集中できない）

学校では基本的に45分程度座っているはず。

10分座っていられないということは、教室でもじっとしていられなかったり、離席したりするなどのサインが表れているかもしれません。

✓勉強の話をすると暴れる・怒鳴るなど強い拒否反応が出る

✓宿題を全くやろうとせず、理由も話さない

このような姿を見ると、親も困りますよね。

学校ではできているのか、それとも拒否反応を示すのか、普段の様子を聞いてみましょう。

これらの傾向がある場合は、学校の先生も気付いている場合が多いので、遠慮なく話してみてください。

先生にうまく伝えるコツと、聞くべきこと

「こんなことで連絡していいのかな？」「家で何とかしないと」と思うかもしれません。

でも、先生に子どものことをより深く知ってもらい「一緒に考える協力の場」にすることが大切です。

ここでは、学校への聞き方を紹介していきます。

「学校ではどんな様子ですか？」
普段の様子を聞くことで、拒否する姿は家だけのものなのかを知ることができます。

家だけな場合と、学校でも拒否する場合とでは原因と対応が変わるので、重要なポイントです。

「家ではこんな感じなのですが、学校ではどう教えていますか？」
「何度教えても定着しない…」

こんなときは、教え方を聞いてみましょう。先生は学習についても色々な解説の仕方を経験しています。同じ説明の仕方ができると、子どもにとって安心感が生まれます。

「家でどんなことをサポートするとよさそうですか？」
家での様子を話すと、その状況にあった関わり方を教えてくれるはずです。

もしかすると、学校では実践しているかもしれません。

「先生から見て、得意そうなこと・興味をもちそうなことはありますか？」
元教員としては、子どもが好きなことは、家族が一番知っていると思っています。

ただ、学校で取り組んだことが「子どもにささる」瞬間があるので、そのようなネタを知ることで、家でも「楽しいひと工夫」ができますよね。

得意なことを切り口にすれば、子どものやる気もアップします。

まとめ｜家庭学習は「できることから」が大事

小学生が家庭学習を嫌がるのは、よくあることです。
「うちの子だけ…？」と心配になる必要はありません。

特に低学年のうちは、体力や気分の波、環境や声かけの影響を強く受けます。
大切なのは、毎日完璧にやらせることではなく、少しずつでも学びに向かう習慣を付けていくことです。

紹介したような声かけや環境づくり、アイデアを通して、子ども自身が「やってみようかな」と思えるきっかけを作ってあげられると、学習への気持ちも自然と前向きになります。

親も子も無理のない形で、家庭学習を「少しずつ」続けていけたらいいですね。