小学生の行き渋り|原因と家庭でできる対応【元教員が解説】

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新年度が始まってしばらく経ち、新しい環境にも慣れたはず。

それなのに、子どもが最近「学校に行きたくない」と言い出した…。

このような経験、ありませんか?

 

「学校で何かあったのかな」

「甘えじゃないの?」

心配になる気持ちと、どうしたらいいかわからなくなる気持ちになりますよね。

特に、朝のバタバタする時間に「行きたくない」が始まると、親も焦ったりイライラしたりしてしまいます。

 

でも実は、その『行き渋り』は、子どもの心のSOSかもしれません。

このSOSを見逃すことで、のちに不登校につながる可能性があります。

 

子どもがなぜ「行きたくない」と感じるのか、家庭でできる対応や学校との連携の仕方など、元教員の視点から解説します。

行き渋りは「子どもからのSOS」

行きたくない理由を聞いても要領を得ない…

先生に聞いても、学校では元気に過ごしているそう…

 

誰に聞いても理由がはっきりしないと、「ただの甘えなのでは?」と思いますよね。

でも、「うまく言えない」だけで、内面では不安や緊張と闘っていることもあります。

そして、一見元気そうだから、周囲には気付かれにくい。

 

その、「わかってもらえない」ことが子ども自身を苦しめている可能性があるのです。

「何か理由があるのかもしれない」と受け止めることが、子どもに寄り添う第一歩です。

【原因別】子どもが学校に行きたがらない理由とは?

一口に行き渋りの原因といっても、年齢や学年によって、理由はさまざまです。

ここでは、「見えにくい原因」を6つ例に挙げました。

子ども自身が「これ」と認識していない可能性や、どれか一つではなく、複雑に絡み合っている場合も大いにあります。

子どもの年齢や学年によって異なる理由を背景を理解するところから始めましょう。

親から離れたくない(母子分離不安)

低学年に多く見られるのが「母子分離不安」です。

「母子」とありますが、母親に限りません。

過去に、お母さんが教室まで連れてきてくれたのですが、廊下で泣いてしまって教室に入れないという子もいました。

見守ってくれる大人がいない(と感じる)

自分のことを1人でできるか不安になる

新しい環境に慣れていない

こうした理由からおうちの人と離れることに強い不安を感じます。

特に、学校は園と比べると保護者の出入りが少ないので、それが現れることが多いのです。

 

学校生活の変化によるストレス

入学や進級によって生活スタイルが変わり、戸惑う子は多いです。

幼稚園・保育園から入学した新1年生は、「学校」そのものが初めてだらけ。

クラスの人数の違い、教師の数の違い(35人の児童に対し、教師1人ということも)

園時代とは違うルールに慣れなければならない

着席している時間が長く、自由に遊べる時間は短い

集団で行動することが多い

どれだけ入学を楽しみにしている子でも、張り切っている子でも、環境が変わる時期は少なからず「無理してる」状態になります。

適応するまでに時間がかかる子にとっては、学校に行くことがつらく感じてしまうものです。

疲れや睡眠不足

例えば、朝起きる時間や家を出る時間。

これまでと生活リズムを変える必要があるとなると、大人でも初めは疲れますよね。

子どもも同じです。

学校から帰ると、宿題をする

毎日17時まで学童に行く

習い事もあって、寝るのが遅くなる

家庭による部分もありますが、新しい環境の中で、変化がつきものです。

 

成長するとともに体力もついてくるものですが、それでも疲れがたまっていきます。

学年が上がると、学校では6時間授業が増えます。

私が受けもった子の中でも、決まって6時間の日に「今日は来たくなかった」という子がいました。

行ってしまえば乗り越えられることもありますが、行く前に憂鬱な気持ちになるのは、大人でも共感できますね。

友達関係の悩み

高学年になると、友達関係が複雑になります。

仲がいい子、あまりよくない子がが固定されるようになることも。

「仲がいい子がいなくて楽しくない」

「仲良しの子とトラブルがあり、行きたくない」

どちらも行き渋りの理由としてあり得ます。

 

スマホの普及で、大人に見えにくい部分でのやり取りが増えています。

特に高学年ともなると、学校のことはなかなか話したがらなくなる子も珍しくありません。

気が付くと大きなトラブルに…ということも多いので、はじめのサインを見逃さないことが大事です。

プレッシャー、不安

学年が上がると、学習の内容が難しくなるだけでなく、授業のペースも早くなります。

子ども自身の得意不得意がはっきりしたり、苦手意識をもったりする時期でもあります。

学業面では、

授業についていけないのに、45分間×6時間、座っていなければならない

テストの点数が気になる(周囲と比べてしまう)

というプレッシャーを感じることがあります。

 

他にも、下級生のお世話を任されたり、委員会などでリーダーを務めることになったりと、高学年になると学校の仕組み上、何らかの役割を受け持つ場合もあります。

経験がなくて自信がない

完璧でなければ、と思ってしまう

完璧主義であればあるほど、こういった不安につながりやすく、学校に行くのが憂鬱になるケースも多いです。

 

実際、私が受け持った子の中にも、保護者の方からの連絡で「委員会がある日はちょっと憂鬱そうです」と教えていただいたことがあります。

先生がこわい、合わない

先生がこわい

先生が理不尽だ

授業がおもしろくない

現場でよく耳にしていました。

 

「先生がこわい」は、低学年によく起こります。

高学年になると、「先生が理不尽だ」「人によって態度が違う」と不満を感じることがあります。

 

人と人である以上、ある程度相性がつきものです。

声のトーン、ちょっとした態度などから苦手意識が強くなり、「学校に行きたくない」という思いにつながってしまうことがあるのです。

 

学年と主な原因
【低学年】
・母子分離不安
・環境への不適応
・生活リズムの変化による疲れ
・先生がこわい【高学年】
・友人関係
・プレッシャーや不安
・先生と合わない

子どもの年齢や学年に応じて、行き渋りの理由は異なります。それぞれの背景を理解し、適切な対応を心がけましょう。

行き渋りは不登校の前兆となることも

文部科学省の調査によると、不登校は年々増加の傾向であることがわかります。

引用:令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 本体資料

引用:令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果 概要

 

この調査から、小中学生の不登校理由として、「やる気がでない」「不安」が約半分を占めています。

また、23%は「生活リズムの不調」を理由としていることがわかります。

 

約10年前の調査では、不登校の理由として「友人関係」が約半数でした。

 

年々「無気力」「不安」を感じる児童生徒が増えており、それが不登校へつながっているということです。

 

はじめはちょっとしたサインかもしれません。

でも、その行き渋りを放置すると、不登校へと発展する可能性があるため、早期の対応が重要です。

家庭でできる具体的なサポート方法

行き渋りには、「最近元気ないな」とその兆候が表れる場合と、「元気そうに過ごしていたのに」といういわゆる「急に」現れる場合があります。

ここでは、子どもが学校に行きたくないと言ったときに家庭でできる対応と、避けてほしい対応について解説します。

子どもの気持ちに寄り添う

「学校に行きたくない」と言われたら、まずは否定せずに話を聞いてあげましょう。

子どもが理由を話すことができる状態であれば、その悩みを共有し、共感の姿勢を見せます。

「家族が聞いてくれた」「わかってくれた」という安心感を与えることが大切です。

生活リズムの見直し

生活リズムが乱れている場合は、まずそれを整えましょう。

夜しっかり寝ているか、朝はすっきり起きれるかなどチェックします。

朝、すっきり起きられないときは「学校に行きたくない」という気持ちにつながりやすいです。

気持ちを切り替える働きかけ

学校生活の不安を抱えている場合、自己肯定感が下がっている可能性があります。

家庭でのお手伝いをお願いし、達成感を味わわせることや、「できた」というポジティブな感情を生むことを目指します。

子ども自身が好きなことに取り組めるようにサポートし、自己肯定感を高める働きかけも有効です。

「頑張れ」は逆効果?避けたいNG対応

行きたくない気持ちを否定する

家で元気そうに過ごしていると「甘えているだけじゃないのか」と思ってしまいますよね。

でも、否定的な言葉は、子どもの自己肯定感を下げ、信頼関係を損なう原因となります。

「行きたくない」という理由が何かあるはずと考え、まずはその気持ちを受け止めてあげましょう。

登校を無理強いする

「学校では元気に過ごしてますよ」と、担任からは言われるかもしれません。

実際、行けばなんとか過ごす子も多いものです。

でも、それは子どもが無理して適応しようとしている姿。

 

子どもが行きたくない理由を無視して無理に登校させると、さらにストレスを感じたり、その反動がきたりして、不登校につながる恐れがあります。

気持ちを受け止めつつ、どういう環境なら登校できそうか、話し合ってみてください。

それだけでも「わかってくれた」と安心し、学校に足が向かうようになることがあります。

「学校には行かなきゃだめ」「休むなんてだめ」と、頭ごなしに否定するのはNGです。

理由を問い詰める

「行きたくない」「学校やだ」そんな言葉の裏には、思いがあります。

でも、それをうまく説明できなかったり、言いたくなかったりすることもあるのです。

子ども自身も気持ちが整理できていなく、なぜそのような感情になるのかわからない場合も。

 

大人は「どうしたの?」「何かあったの?」と聞きたくなりますよね。

子どもがそれをうまく言えないときは、行きたくない気持ちを受け止めることを優先します。

「理由がないなら行きなさい」と否定しないように気を付けましょう。

 

家庭でできるサポートとNG対応

◎子どもの気持ちを受け止める
◎自己肯定感を高める
◎生活リズムの見直し

△甘えと決めつける
△無理やり登校させる
△理由を問い詰める
→親子の信頼関係が崩れ、自分の気持ちを言えなくなってしまう
→不登校へとつながる可能性がある

子どもの行き渋りが続く時の相談先

行き渋りがあったときには、まず学校に連絡を考えますよね。

「理由がわからないのに、なんて連絡したらいいの?」

「行きたがらないなんて、先生に言いにくいかも…」

そう思う保護者も少なくありません。

ここでは学校への相談の仕方や内容、ほかに頼れる機関について、元教員の視点で解説します。

まずは学校やスクールカウンセラーに

学校への相談は、ありのままでOKです。

理由がはっきりしない場合でも、そのまま伝えてください。

登校できている場合でも、学校で様子を注視してもらえるきっかけになります。

普段より注意深く担任が見ることで、理由の見当がつくこともあります。

また、辛そうなときに保健室や別室で学習するなど、具体的な対応についても相談することができます。

 

行き渋りの原因が担任である、もしくは担任には言いにくい理由であるときは、直接担任に連絡を入れなくても構いません。

保健室の先生、教頭、校長など別の職員に相談することも可能です。

 

また、学習の遅れが気になっていたり、集団生活への不適応が見られたりしていて、特別支援教育を考えている場合には、各学校にいる「特別支援コーディネーター」の職員と話をするというのも一つの方法です。

相談をしたからといって、すぐに支援学級を勧められるわけではありません。

学校職員からスクールカウンセラーへの相談を提案されることもあります。

スクールカウンセラーは専門的な知識がある職員です。

子どもだけ、保護者だけ、という利用もできますので、気になる方はつないでもらえるように言ってみてください。

 

公的な機関を活用する

「外部の人にも相談したい。」

そんな時に頼れる相談先を知っておくと一安心です。

 

①各自治体が設置している「教育支援センター(適応指導教室)」は長期間登校できていない子に対して、教科指導や体験活動を保障する場です。

保護者の相談、カウンセリングも行っています。

 

②厚生労働省の「こころの相談窓口」には不登校専用の窓口があります。

保護者からでも、本人からでもかけられるダイヤルです。

 

③夜眠れない、体に不調が現れる場合は、病院の受診も検討しましょう。

学校も関係機関も、子どもと保護者の味方

子どもの行き渋りは、一時的である場合も多いです。

発達とともに、落ち着いてくることもあります。

でも、「不登校につながる可能性がある」視点をもって適切な対応をすることが重要です。

 

子どもが行き渋ると、保護者も焦りや不安が生まれます。

そんなときに学校から電話が来ると、追い詰められている気分になるのも無理はありません。

 

学校含め、関係機関は子どもとその保護者の味方です。

どうか、一人で抱え込まず、周りを頼りながら子どものサポートをしていってください。

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